中核社員、管理職の能力を伸ばす経営会議

会議に関する悩みは企業にとって永遠の課題です。会議が長い、発言者が少ない等の相談も良くあります。会議を実効性の高いものにする為には、当事者意識を高めることと会議の目的を対策を決定することに絞ることです。

当事者意識を高める為には、計画策定や経営計画発表会で各自の幸福と企業業績が密接に関連していることを示すとともに、幹部、社員が計画に対して達成を約束することが大事です。

対策決定を会議の目的にするのは、反省では売り上げは上がらず、対策が売り上げを上げるからです。

ここでは業績を上げるための達成会議の進め方をお伝えします。詳細は以下をご参考ください。

5. 業績を上げる経営計画の進め方 (Check・Action)

5.1. 業績を上げる経営計画の実行

難しいと思われる目標に対して達成度を高めていくためには、 期間を短く区切り、実行→結果→対策というプロセスを行っていく方法があります。 年、四半期、月次、週次、日次、期間を短く区切ることで確実性が高まります。

年度計画を達成する為には日次月次で目標を設定する

いくら計画を作っても実績が出なければ意味がありません。3年後、5年後の目標値がどんなに立派でも、 日次の目標を達成できなければ、年次目標は達成できません。単年度予算は、月次予算が達成できなければ、達成できませんし、月次予算は、日次目標が達成できなければ、達成できないのではないでしょうか。計画は長期から短期に策定しますが、実績は短期が積み上がり、長期の結果となります。

3年計画 日次計画
table-5years_plan table-monthly_result
business_idea3年後の目標は立派でも・・・ business_think今月の目標は未達・・・

どのぐらいの期間で区切るかは業種等によって異なりますが、下記に単年度、月次、日次の考え方を整理してみました。全て期初に目標を立て、期末に実績と目標の比較を行い、翌期の対策を立てることは同じです。

計画策定 目標達成
単年度計画策定 単年度予算達成
  1. 年初に目標を設定

  2. 年末に実績と目標とを比較

  3. 次年度の計画を立てる

月次計画策定 月次目標達成
  1. 月初に目標を設定

  2. 月末に実績と目標を比較

  3. 来月の計画を立てる

日次計画策定 日次目標達成
  1. 毎朝、目標を設定

  2. 毎夕、実績と目標を比較

  3. 翌日の予定を立てる

進め方の基本は過去を反省し、今の計画を見直す

実際に業務を行っていけば、目標に実績が届かないことがあります。この時には、「何故届かなかったのか」「どうしたら届くのか」という視点で目標を再検討し、どうするのかという点を明らかにします。こうした会議が難しいのは、報告で終わってしまうことが多いからです。単に結果の報告に留まらないよう、1.結果、2.分析(良かった点、悪かった点)、3.対策という流れを周知徹底します。

もう一つの難しい点は、しばしば責任追及が主題となってしまうからです。誰の責任か突き詰めれば経営者の責任ですので、このやり方には意味がありません。発表する側も責められることで発言しにくい心境に陥りやすく、これから何をしていくかという最重要な点から遠ざかってしまいます。そうならぬように経営者の側から適切に流れを制御する必要があります。

  • 結果しか報告しない ・・・ 悪い例

  • 反省しか言わない ・・・ 悪い例

  • これから頑張りますとしか言わない ・・・ 悪い例

  • これからどうするかを言う ・・・ 良い例

朝礼で昨日の実績と今日の目標を発表

朝礼は月次目標を達成する日次管理

現場が毎日の達成度を知る必要がある

朝礼では目標に対する達成度を話します。 又、目標を上回っている時は良かった原因、目標を下回った場合は対応策を簡単に話します。 目標を下回った時に原因だけを話さず、対応策についても必ず話すようにします。 原因は幾つもあるでしょうし、「じゃあどうするのか」という対応策が大事だからです。

朝礼の内容例

朝礼は目的を持って行うと良いと言われます。 上の例では、「目覚まし」「達成管理」、理念からくる「感謝の気持ち」という3つを目的としています。 朝礼委員会等あっても良いかもしれませんね。

  1. 集合
  2. あいさつ訓練
  3. 昨日の達成度
  4. ありがとうのことば
  5. 締めの号令

週間予実管理表

下記は週間予実管理表の例です。累積差異を計算することで、水曜日が終わった時点で△7の遅れが発生しています。これを木・金の2日間で取り戻すことを考えると、1日3.5の上積みが必要になります。目標数値を具体化することで、社員の行動を促す例です。

週間予実管理表

5.2 達成会議の実施

年間の業務の中での振り返りでも特に大事なことが月次の達成会議になります。皆さんの会社でも定例会議をなさっているのではないでしょうか。達成会議でもその他の会議と同様に結果を受けて今後どうするのかという対策を決定することが重要になります。また、経営幹部が集まることで、部署間の調整や経営者との調整も可能となります。

経営計画発表会で計画数字を発表、達成会議で追いかけていく。
  • 経営計画発表会でPLANを立て、

  • 達成会議で前月実績をCHECK、次月のACTIONを決定

会議体 参加者 準備 資料
経営計画発表会 経営者&全社員 業績分析
中期経営計画
単年度計画
中期経営計画書
単年度計画書
達成会義 経営者+経営幹部 月次集計
行動実績確認
予実管理表
行動実績一覧表

業績検討会の進め方 その1 準備

  1. まず、部門別損益計算書を幹部にしっかり理解してもらう

  2. 次に自分の部門の損益がどのようになっているかをしっかり理解してもらう

  3. その結果、どうすれば利益が出るのかを考えてもらう

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目標管理シート

下記のシートは、会議を行うに当たり、事前に準備しておくシートです。概要→結果詳細→分析→対策という流れをしっかり作ることで、会議での責任追及や反省のみに終始することを防ぎます。

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数字を理解するポイント
  • 赤字はお金が減っていくこと。

  • 利益=売上-費用

  • 利益=売上×粗利率-経費 ・・・ 利益を増やすには売上を上げるか、粗利率を上げるか、経費を下げるしかない。

  • CF=利益-売掛増加-棚卸増加+買掛増加 ・・・ 売掛、棚卸を増加させないようにする。

  • 行動と数字を結び付けて考えてもらう。値引き→粗利率低下、残業→人件費増加、支払い催促→売掛減少、少量仕入れ→棚卸減少 等々。

業績検討会の進め方 その2 前月の結果、今月の行動

  1. 前月の結果を反省し、今月の行動予定を話してもらう

  2. 今月の行動予定は、いつ誰が何をして、どう数字に繋がるかを話してもらう

  3. 計画と実績に差がなくなってきたら、月末に業績検討会を開く

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当月計画発表のポイント
  • どのような行動を起こすかが大事。分析・反省だけでは意味がない。

  • 数字をどうするか、何をするかという決意を表明する

  • 計画と実績が合わなければ、週間、日毎で考える

  • 謝罪は不要。どうするかが大事。

業績検討会の進め方 その3 計画に対する差異

  1. 慣れてきたら、年初に立てた計画数字との比較を意識してもらう

  2. 年初からの達成度を検討し、必要な対策を検討する

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予実差異への対応のポイント
  • 大幅に計画と違えば、再予算つまり経費を絞ることが必要

  • 他部署をどう支援できるのかを考えてもらう

  • 幹部を計画数値達成、他部署への支援で評価する

  • 売上の増減に伴って経費を削減士ながら、他部署への出稼ぎを行う

業績報告会を有益にする社長の質問
  • 一般社員は行動が大事、管理職は結果が大事。管理職にはその為に権限を与えている筈。結果を出す為にどうすれば良いか。

  • 赤字はお金がなくなっている事。赤字→皆の賞与に影響→借入の増加→最後には倒産という理屈が呑み込めているか。

  • 売上を上げるか、経費を削るか、どうするか考えてほしい。

  • 売上より利益が大事。安易な割引に走っていないか。

  • まずCF、次に利益を見よ。予算差異の原因を追究し、対策を立てよ。

予実差異の原因掘り下げ


特に予実差異が悪い方に振れた場合は、原因をしっかり追究します。抽象論ではなく具体的なイメージが湧くまで問題を掘り下げます。問題を掘り下げていくと、どうすれば良いかが見えてきて、行動に繋がります。


経営幹部・中核社員の能力開発の方法

社員の能力が低いとお嘆きの経営者も多いようです。実際、中小企業では優秀な人材を採用するのが難しいですよね。そこで見方を変えて、普通の人材を優秀な人材にする能力開発の方法はないかと考えてみます。よくあるのは社内研修です。新入社員研修や管理職研修など、様々な研修があります。ところが、ある調査によると、社内研修よりも実地での経験の方が能力開発に効果があるそうです。

要領よく実地での経験を積むためにはプロセスの見える化が不可欠です。プロセスが見えなければ、経験をそもそも積んでいるのかどうか分かりません。ここでは各部署の数値結果を明確にし、それにどう対応していくかというプロセスを考えてみます。

4.1 会社が大きくなってきたら、予実検討会議を開く

会社が小さいとき 社長だけが数字に強くても会社は成長する
考えているのは社長だけ。
会社が大きくなってくると 幹部が数字に強くならないと会社は成長しない
幹部にもしっかり考えてもらい業績を伸ばす。

会社が大きくなってくると、社長が全ての業務を見ることが難しくなりますし、 経営幹部の力を活かすことで組織力を発揮することができるようになります。 経営幹部に力を発揮させるには、担当の部署の数字(結果)がハッキリわかっていることが大切です。 結果が直ぐに分かれば分かる程、改善の速度は速くなります。

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経営における最終的な結果というのはやはり収益ではないでしょうか。上記の例では、営業部、製造部、管理部を事業部として捉え、損益を事業部別に表示しています。部署別に部署長の判断の結果が直ぐに分かれば、改善も容易になります。部門別採算制に関しては下記のURLもご参考ください。

4.2. 幹部が数字に強くなるには

「そうはいってもウチの管理職は数字なんて分からないよ」という会社もあります。誰でも最初は分からないものですが、自ら考えていれば、自ずと理解できてくるものです。そこで役員会や部長会議の場で結果を数字で発表してもらいます。

  • 数字で発表してもらう

  • どうしたら良いのかを発表してもらう

「何故悪かったのか」ではなく「どうしたら良いのか」を発表すると、 経営幹部や中核社員の責任感を育てることができます。 社長以外の責任は、経営責任ではなく、何とかして目標を達成する責任だからです。つまり、結果責任ではないので、どうするかという行動の責任を明確にしてもらうのです。

経営の多くのプロセスは、分析(良かった点、悪かった点)→行動計画(誰がいつまでに何を)→資源の調達計画(経営者の理解、他部署との調整、資金繰り)→数値計画(損益計画)という流れを取ります。たまに分析だけで終わっている報告を見るのですが、それでは不足しています。どういった仮説をもとに、いつまでに何をして、必要なものは何で、結果としてこうなる筈だということがなければなりません。ここは経営幹部の報告が分析で終わっている場合には適切な方法で導いてあげる必要があります。

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4.3. 数字に強い幹部を育て、利益がでる組織をつくる

具体的に数字のどこに着目すればよいかをコンサルティングの実際に合わせて以下の通りまとめてみました。

  1. 簿記ではなく、実態に即した数字を把握する

    経理部長や税理士の先生は正確な数字を計算することに注力しています。これは税務署に報告する数字を扱っているからと考えられます。一方で経営の数字は成るべく直ぐに分かることが重要です。簿記の知識がなくてもまずは要点を抑えることを目指します。

  2. 利益を出す為に数字を確実に把握する

    1. 各勘定科目の金額の大きいところから意味を知る

    2. 数字の内訳に注目する
      ・ どこからいくらもらっているのか?
      ・ どこへいくら支払っているのか?

    3. 現在の計画達成度を知る
      ・ 計画通りなのか、計画には足りないのか?

    4. どうすれば今以上に利益を増やせるのか?

    5. 来月・来週・明日、するべきことは何か

    6. これらのことを会議で発表する

      前月は○○の利益でした。来月△△を行い、利益を□□にします。

    各科目を検討する際には数字の大きいものから順に考えていくほうが良いでしょう。数字の大きい科目を改善することができれば、それだけ成果も大きいと考えられるからです。一方で、科目の内容を検討する際には売上とその元となるもの、例えば仕入れ、製造原価、広告費などを検討していきます。

  3. 継続的に取り組みを行うと、利益が残る組織体質になる

  4. 取り組みはやはり継続することにより組織体質が強化されます。

業績を改善している会社の秘訣

  1. 成長している会社は社長も幹部も数字に強いようです。

  2. 社長や社員が数字に弱ければ、結果に対する意識が弱くなり、 結果を出すのがむずかしくなります。

  3. また、結果が分からない為、改善が進みません。

  4. これでは生き残りが難しくなります。

組織とは?: 組織成立の3条件

このサイトのテーマは「社員のモチベーション・責任感を高める」ということですが、そもそも組織とは何でしょうか。皆さんは組織といえばどういうイメージを持つでしょうか。この最も根源的な質問に答えた古典的理論として、ここでは組織成立の3条件(組織の3要素)を再考してみます。


組織成立の3条件、C.I.バーナード、共通目的、協働意識、意思疎通


C.I.バーナードは米国の電話会社の経営者でした。彼は組織を「意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム」と考えました。まず、烏合の衆では組織とは言い難く、意思を持ってお互いに協調するのが組織という訳です。

バーナードは組織を協働という概念で説明しました。人間には肉体的・能力的にどうしても制約があり、そのために目的を達成できない可能性があります。しかし何人かの人が集まって、持っている力を合わせてお互いに補いあえば、目的を果たすことができるかもしれません。そのような人間の集まり、つまり協働するということが組織が成立することにつながると考えました。

そこで組織の3要素として、

  • 共通目的(組織目的)

  • 協働意思(貢献意欲)

  • 意思疎通(伝達)

の3つが必要だという結論に至りました。

共通目的(組織目的)

現代風に言うと「経営理念」や「経営ビジョン」となるのでしょうか。逆にいうとこれがなければ組織たり得ないということでしょうか。一緒に働いていたとしても、共通目的がなければ、システムの歯車に過ぎません。そうなりがちな人々を有機的に結び付けていくためには「錦の御旗」である共通目的が必要だと考えられます。

但し、組織目的は社会にとって受け容れられるもので、市場で有効なものである必要があります。この状態を彼は組織存続の為の条件の1つである外部均衡という言葉で表しました。市場にとって有効な組織目標でないと売上が上がらず、組織の存続も考えられません。

▶ 【姉妹サイト】経営ビジョンの事例・具体例

▶ 【姉妹サイト】経営理念の事例・具体例

▶ 【姉妹サイト】経営理念を浸透させる方法、具体例

協働意思(貢献意欲)

組織のメンバーの一緒に働きお互いの役に立ちたいという意識のことです。これが全くなければ、例えば「蟻」や「蜂」の群れのようなものになってしまうのかもしれません。即ちシステムの一環としては機能していても、組織というのは物足りないのでしょう。皆さんの組織はどうでしょうか。自分の仕事はしっかりしてくれるんだけど、貢献意欲に乏しい人もいるかもしれません。社員の貢献意欲が低いことを、社員のモチベーションが低いと言うこともあります。

意思疎通(伝達)

メンバー間の意思疎通、リーダーとメンバーの意思疎通、何らかの意思疎通があって初めて組織として成立するという考え方です。うまく行っていない組織はまずこの点を考え直した方が良いのかもしれません。

こうやって見てみるとバーナードの理想も見えてくると思います。共通の目標があって、メンバーは貢献意欲があり、適切に意思疎通を行っているのが、彼の理想とする組織という事です。最近の言葉でいうと「チーム」のようなイメージでしょうか。

コンサルティングの現場でも、この「組織成立の3条件」を使って、組織の評価を行うことが良くあります。組織というとなかなか掴みどころがなく、どう評価するか難しいものですが、こういった視点を元に分析すれば、組織の課題が見えてきます。コンサルティングではこの3条件に加えて、永続組織の条件として、メンバー育成を評価します。採用、社内研修、OJT等、要は人材育成を行いメンバーが入れ替わる仕組みが正しく機能しているかを評価します。

バーナードは組織が存続していくための条件についても述べています。所謂、組織存続の2条件と呼ばれ、内部均衡・外部均衡という用語で説明されます。外部均衡とは組織目標が市場にとって有効、即ち市場に与える価値がその費用を上回っていることを言います。また、内部均衡というのは、組織の参加者が「誘因 ≧ 貢献」、即ち貢献以上のリターンがあることを意味します。メンバーが自分が貢献した以上にもらえるものが大きいと考えている状態です。

実際にはメンバーが自分の貢献以上にもらえていると感じる状態を作り出すのは難しいのではないでしょうか。これについては動機付け要因・衛生要因のところで再度説明します。

バーナードの組織論はいかがだったでしょうか。人を動かすにはという視点で見ると、組織目的の設定、貢献意欲の醸成、意思疎通の活性化といった課題が浮かんでくるのではないでしょうか。また、メンバーの貢献に対して何らかの報いを与え、社員のモチベーションを維持させる努力も必要です。

経営計画は誰の為か?: 経営計画の要点

経営計画というと、とかく株式公開会社の株主総会で発表するものという印象が強いようです。それでは株式を公開していない会社ではどんな意味があるでしょうか。

当たり前のことですが、経営計画は経営者の未来に向けた構想を利害関係者に対して、発表するものです。株式を公開していない会社の場合、経営者が会社の多数の株式を持っていることが多く、株主・投資家に対して株式の積極的な購入を促すという側面は弱いと考えられます。

勿論、中小企業であっても、Venture Capital等から融資を受けている場合、経営者と株主が違う場合には業績報告と経営計画発表を何等か形式で行うことが多くあります。シッカリした形にしないと、経営者を含めて人の考えを伝えるのは難しいものです。

それでは企業の利害関係者とは株主・投資家以外に誰がいるのでしょうか。

経営計画の要点、中小企業の利害関係者、株主・出資者、幹部・中核社員、社員、金融機関


一つは金融機関です。金融機関は融資を行い、利息を収入としています。貸したお金が返ってこないことは、貸し倒れとか融資の焦げ付きなどと言い、金融機関が一番恐れるところです。また、最終的に貸し倒れなくても、融資先の業績次第で引当金を積む必要があります。正常先、要注意先、要管理先、破綻懸念先、実質破綻先という言葉を聞いたことがあるかもしれません。銀行内部で債権を格付けした際の区分名ですね。要管理先以下はそれなりの額を引当金として計上する必要があり、銀行の損益を圧迫します。

経営計画の内容によっては、この格付けを引き上げる効果があります。金融機関は計上していた引当金を取り崩すことができますので、金融機関の損益には良い影響があります。

実は最近、金融庁の方針として「事業性評価」ということが、各金融機関に通達されています。事業性評価というのは簡単に言うと、従来の担保や社長の個人資産に頼った融資ではなく、事業の成長性をきちんと評価して融資を決めましょうという呼びかけです。金融庁としては、国債ではなく、地域の成長企業に融資を行ってほしいのです。実際に現場に定着するまでには、何らかの施策が必要と思われますが、方向性としては今後も継続すると考えられます。

大企業になると、取引先を招いてその年の方針を説明する企業もあります。これは自社の今後の動向や今の話題を取引先と共有し、取引先にそれに沿って動いてほしいからだと考えられます。勿論、方針説明会の後にパーティを開催し、取引先との親睦を深めたり、労をねぎらう目的もあるでしょう。

顧客に対しては、経営計画発表会というよりも、新商品発表会や製品ロードマップの公表といった形式で企業の今後をアナウンスすることがあります。

最後に、当サイトの本題ですが、自社の幹部・中核社員に向けて経営計画を発表することにどんな意味があるでしょうか。この場合も他の利害関係者と同様に、何かの行動を依頼したり促したりする効果があるかと思います。経営者の考えを幹部・中核社員が知ることで、幹部・中核社員はそれに沿った行動を考えることができます。自分で考えることは人に言われてやるより高い人材育成効果があります。また、経営への参加意識を醸成することで、社員のモチベーション・責任感を高めることができます。


経営計画で収益が改善するか: 経営計画の意義

経営計画で会社の業績が改善するのでしょうか。にわかには信じがたい話です。ここでは経済団体の調査結果をご紹介します。

皆さんは経営計画といえば何を思い出すでしょうか。特に経営計画、中期経営計画と言えば、株式を公開している会社が株主や投資家に対して発表するものが有名です。大きな会社になれば 1000人も入れるようなホールを貸し切って計画発表会をしていることが、TVなどでもよく報道されています。

これは株主・投資家向けですね。実際に業績への影響はどうでしょうか。下のグラフは、ある経済団体が経営計画の影響について調査を行ったものです。結果として達成確認までを行うと、凡そ25%の経営者が増収になったという結果になりました。

経営計画策定の効果、売上増加、人材育成、金融機関


この調査では、経営計画の活用について、1.作成のみ、2.社内公開、3.達成確認の3段階に分けているところです。当然、経営計画の活用が進めば進むほど、良い影響があると言えます。売り上げ増加に対する影響を見ると、「作成のみ」に比べて「達成確認」を約2倍弱の影響があるという結果です。

調査結果で興味深いのは経営計画が人材育成に効果があると答えた割合が多いことです。経営計画が社員研修の代わりになるのでしょうか。或いは、社員のモチベーションや責任感を向上させたりするのでしょうか。売り上げ増加に比べて、約2倍の答えとなっています。

金融機関に対してはやはり達成確認までをしっかり行うと大きな好影響があるようです。計画の達成度と予実対策を行うことが、有言実行の印象を与えるのでしょうか。

調査結果から、経営計画は達成確認までを行うと、売り上げ増加にとどまらず、人材育成や金融機関との関係改善にも効果があるようです。