権限移譲についての経営者インタビュー: 経営者の気持ち

ある人から権限移譲をした経営者の声を知りたいというご要望をいただきました。下記に権限移譲に関するインタビューを抜粋したものを掲載します。当サイトの文書ではありませんので、飽くまでリンク先の文書をお読みください。

安田隆夫 ドン・キホーテ

CEO社長情報 https://www.ceo-vnetj.com/

株式会社DYM http://dym.asia/

株式会社ドン・キホーテ 安田隆夫

企業には、中小企業から大企業に発展する企業と、中小企業にとどまってしまう企業の2種類がある。中小企業では経営者自らが社内で最も強力な人材で、いわば収益の根源でもある。経営者は企業を体現している存在なのだ。

ところが大企業になると、経営者がどんなスーパーマンでも、一人では企業が成り立たない。収益の根源だった経営者が自らの存在を無力化して、社員に権限を委譲していかなければならない。

単なる中小企業のオヤジなら、自分が一番できると威張っていてもよい。だが、大企業になろうと思うのなら、一般社員にもできるように仕事を単純化して、なおかつ落とし込む必要がある。そのときには、自分自身の能力をあえて無力化させるために、自分の権限を自ら剥奪しなければならないのだ。経営者は権力者ではない。

ところが、わかっていても、これができないのだ。そもそも、「オレが、オレが」でやってきた我の強い人が経営者になっているものだが、権限委譲は、その我を出すなという作業である。自分の価値をおとしめ、社内での地位を低下させることにもなりかねないと、思ってしまうからである。

中小企業として成功すればするほど、この切り替えができなくなる。だから多くの企業が、中小企業から大企業に進めないのだ。

私も29歳で創業して46歳で上場したが、それまでは権限委譲が十分ではなかった。だが上場したときに、当社は社会的な存在になったのだから、「オレが、オレが」ではなくて現場の人たちを立てることに専念しよう、皆の応援団になろうと切り替えたのである。

当時の私は、社内の誰よりも商品知識を持っていたし、誰よりも販売が上手だった。社員に対しては「お前たちはオレとレベルが違うのだから、早くオレの域に追いついてこいよ」という話ばかりしていた。しかし、これでは、いつまで経っても差など埋まるはずはなく、経営者としてもレベルが低い。みなの応援団に徹することができたら、自分を誇示していたときの私よりも、少しはレベルが上がると考えた。

そこで、ある日突然「お前たち、頼むよ。口は出さない」と切り替えた。信頼とは、文字どおり信じて頼むことである。信じて「お前たち、頼むよ」と申し渡したのだ。私の心の中で葛藤はあったが、そうしないと絶対に会社は発展しないと腹の中で理解したのだった。

株式会社メルカリの取締役社長兼COO 小泉文明

SmartHR Mag.  https://mag.smarthr.jp/

株式会社SmartHR https://smarthr.co.jp/

メルカリ社長が語る「意思決定スピード」の源泉。ポイントは”情報公開”と”権限委譲”

宮田:先程「メルカリ入社後に家族と向き合う時間が増えた」とおっしゃっていましたが、小泉さん自身も育休を実際に取得した感想はいかがですか?

小泉さん:「意思決定の権限委譲」がめちゃくちゃ進みましたね。やっぱり自分が離れることを前提にすると「この辺がヤバそうだな」っていうのが見えてくるので、数ヶ月ほど前からマネージャーをどう登用するか、もしくは採用して引っ張るのかなどを考えた上で。

私自身2ヶ月育休を取得して、メンバーが非常に成長したと実感しています。

ベンチャーってどうしても経営者に依存しがちで、皆さん、僕がどういう意思決定するのかみたいなのを非常に気にしていましたが、それがマネージャー主導で自走されていきましたね。育休に入るタイミングが、経営陣の中で私と子会社社長の2人が同じだったので、そのタイミングで「日常の業務はマネージャー以下で回せる会社にしよう」と。むしろ、経営陣は、中長期的な戦略であるとかロードマップ、あるいは採用などに対してコミットしようという形に役割分担を明確にして。

現場で何が起こっているかは、Slackの情報がオープンなので、そこでキャッチアップするにとどめ、現場の意思決定には介入しないようにしています。

村上憲郎(グーグル日本法人元社長)

事業構想オンライン 月刊「事業構想」 https://www.projectdesign.jp/

学校法人先端教育機構 事業構想大学院 https://www.mpd.ac.jp/

https://www.projectdesign.jp/201307/howtofind/000645.php

グーグルは「放し飼い」 最低限のルールで十分

とはいえ、イノベーティブな考えやクリエイティブな発想を積極的に受け入れ手放しで任してしまうと、当然ながら経営リスクも生まれる。

 そこで社員には「会社の目的は何か」というミッションステートメントに基づき最低限のルールを設定してあげればいい。 そして好きにさせるのだ。何をやってもいいが、「収支だけは合わせる」というシンプルなスタイルなら誰にもわかりやすい。

 例えば、こんなケースもある。

かつて権限を与えた社員が判断に行き詰まり、「どうしましょう」と助言を求めてきたことがある。そこで私は、「君以上に詳しい人はいないのだから、君以外の誰にもわからない」と答えた。無責任のようにも思える回答だが、権限の移譲とはこういうことだ。結果的に本人は「自分で決めるしかない」と自覚しモチベーションを向上させた。

 組織からヒエラルキー構造を取り除いてフラット化させ、業務に最低限のルールさえ決めれば、自分の責任で働くようになる。これが社員の能力を引き出すことにつながる。

 成果を評価する際も、上司、部下、同僚、他部門と360度で合議し、目的の達成に必要なら部下が上司の目標を決めてもいい。

 かつて私はグーグルで社員を「放し飼い」にした。社員に任せることが大切だと思っている。

会議も社員の能力を引き出す大切な場所

 会議も社員の能力を引き出すうえで大切な場所だ。言うまでもなく、これも従来の型にはまったようなスタイルはダメだ。口が上手な人や、声の大きな意見が目立ち、意見に対する反応を威圧的に感じて発言を控えてしまうこともある。

本当にクリエイティブな会議を行いたいなら、次のような方法もある。

まず50枚ほど紙を配って参加者に思いついたままを書かせる。次にそれらをキーワードでグルーピングしてホワイトボードに張り出し、それを見ながら話を始めるのがいい。他人の書いた言葉が脳を刺激し、これまで考えてもいないアイデアを生み出すことができる。

つまりアイデアを思い付くきっかけづくりのために会議を開くのである。この方法はブレインストーミングに似ているが、より創造的だ。口下手な人の能力も、うまく引き出すことができる。

トップの意識改革が現場の強みを引き出す

もう一つ、イノベーティブな人材を育てる方法に自由を与えることがある。グーグルには、「勤務時間の20%を使って、通常の職務以外でやりたいことをする」という制度がある。

 20%を社会貢献に充てても独自の研究開発に費やしても構わない。こうしたゆとりから新しいものが生まれてくる。100%の時間を縛ると無理が生じやすく考え方も硬直しがちだ。

 バブル経済崩壊後、日本企業は短期的視野でしか事業を捉えなくなった。これまで日本の企業は、改善など現場の社員の能力を引き出すことで業績を伸ばしてきた。その精神が今、途絶えているのではないか。

 経営トップの意識さえ変れば、まだまだ社員は、イノベーティブな精神を取り戻せる。組織そのものを見直すことが求められているのだ。

ローソン・新浪剛史

PHP衆知 https://shuchi.php.co.jp/

PHP研究所 https://www.php.co.jp/

https://shuchi.php.co.jp/article/1343

新浪の特徴的な経営手法は権限委譲だ。本社の中央集権ではなく、新規店舗の出店や閉店といったコンビニにとっての最重要戦略も、ローソンでは全国8つの支社のトップである支社長に全権委任されている。本社による中央集権ではなく、徹底した地域分権。

 新浪はまるで口癖のように「まかせる」を連発する。これはと思った人物には徹底的に「まかせる」。ただし権限は責任を伴う。まかせて失敗すれば降格する。ただし、降格を致命傷にはしない。再起を促し、期待に応えれば、復活できる。厳格な「責任と権限」の大原則を貫いてきた。だが、その徹底ぶりがいったいどこからきているのか。それが私にはわからなかった。

 もう1つわからなかったことがあった。氏も育ちも違う野合集団のローソンを正常化するプロセスで、新浪は社外から多くの人材を引き入れたが、そのやり方はすべで一本釣りであった。

 しかも新浪自身が直接会い、迷う相手を口説き落としてローソンの枢要ポストに就けてきた。必要な人材を探すところから口説き落とすまで、すべて自分独りでやり続ける。時間に忙殺されるなか、なぜ新浪は自ら口説き落とすことに執着するのか。わかるようでわからない。私は確たる理解ができずにいた

マイネット 上原社長

Venture Navi http://venturenavi.dreamincubator.co.jp/

株式会社 ドリームインキュベータ http://www.dreamincubator.co.jp/

600名企業の上原流・組織論 マイネット 上原 仁社長(第3話)

権限移譲は利益管理と共に

--組織が拡大し人数がどんどん増えていく中で、組織マネジメントスタイルをどのように工夫されていますか?

リーダーシップは気合と論理と話しましたけれども(第1話リンク)、マネジメントに関しては論理立てて工夫しています。組織が100人を超えたあたりから、権限・責任の明確化と利益のマネジメントをきっちりとやっています。

組織の人数が増えていくときには権限移譲をしていくわけですが、それは「やってみな」だけではダメなんです。管理会計としてしっかり利益の握りをしたうえで、人とお金の責任を渡すということをしています。「権限委譲は利益管理と共に」ですね。これをマイネットでは「グローススタジオ体制」と呼んでいます。要は利益を出している範囲においては、人とお金の権限責任はがっちり渡す、権限を委譲される側に、機会を提供していくということをしています。

一方で、失敗したらどうなるかというと、そこの最終的な責任は社長である私が持ってあげるというスタイルを今はとっています。失敗しても、その人が飛ぶとかクビにすることはしないという意味で「ケツは持つから大丈夫だ」、と。もちろん、その人がいったん退くという人事采配をすることはありますが。

権限移譲は数字の握りをしないと、正直なんの意味もありません。コントロールに対する権限責任と結果に対する責任を任せてあげなかったら、その人なりの構造作りができないわけですよね。いかなる利益を生み出すかを数値で握って、中身・やり方は構造から考えてよろしい、という任せ方をすることが大事です。

その結果、ダメでも責任は本人に問わないでいいし、「ケツは持つ」のが代表取締役の役目だと考えています。

3つのスキルを階層ごとに使い分けて人材を評価

--いま上原さんご自身で直轄マネジメントされているのは何名くらいいらっしゃいますか?

現在、役員は8人、マネージャーは約50人います。そのマネージャーの中に部長格というのがあって、私は役員と部長格を直轄しているという状況にあります。

--部長格は何人くらいですか。

約15、16人です。役員は、職層というよりも「部長格」と意味合いとしてはほぼ同じです。要は一般社員、マネージャー、部長格、社長という4階層で組織運営していますね。

--個々人は能力も特徴も違うと思うのですが、仕事や権限などの任せ方はどう使い分けされてますか。

能力に関しては、「ヒューマンスキル」、「テクニカルスキル」、「コンセプチュアルスキル」、という3つのスキルに分解して見ています。マイネットのマネージャーは多くの場合がゲームのプロデューサーなので、「テクニカルスキル」といえばゲームに関する経験・知識になります。「ヒューマンスキル」は人に関しての感度と人を率いる力やプレゼンテーション力、「コンセプチュアルスキル」は構造的思考能力のことで、問題の抽出、解決精度の高さに再現性がある状態と定義しています。

この3つのスキルで見ていった時に、上位レイヤーの階層になればなるほど、「コンセプチュアルスキル」を重視しています。じゃあ、「構造的思考能力って何?」 ということになりますが、それは突き詰めて考えていくと”センス”という言葉に近づいていきます。

この”センス”を持つ人には2タイプいて、一つは右脳型の、アーティスティックな面でも人や組織に対してでも自分なりの構造を作り上げることに長けた人。もう一つは左脳型で問題解決能力の高い人。

例えば、具体名を出してしまうと、マイティゲームス代表の仲川は、もともと30歳まで絵かきで食べていた人です。それなのに組織マネジメントなど、なにをやらせてもエレガントにこなせる。面白いセンスの持ち主です。

一方、マイネットエンターテイメントを任せている田中は東大卒でマイネットに入って、あらゆるポジションを味わせています。どちらかというと左脳型の彼に、短期間で重要ポジションを数多く担わせた。結果的に非常に高い問題解決能力を身につけているのですが、これはある種、築き上げられたセンスですね。v

このように右脳型も左脳型もあるけれど、一定以上の構造的思考能力、問題解決能力を持っている人間を部長格に登用しています。

それより手前のマネージャー格はテクニカルスキルが一定レベルあって、ヒューマンスキルがしっかりある人間を置いています。

アットコスメストア 遠藤社長

beBit セミナー・コラム https://www.bebit.co.jp/info/

株式会社ビービット https://www.bebit.co.jp/

http://www.bebit.co.jp/info/column/cem-interview1.html

権限委譲すると、現場は売上を追いたくなる

筆者:顧客志向で店舗運営をしていく中で、難しいことは何でしょうか。

遠藤社長:アットコスメストアでは、「百貨店限定ブランドだから」などの理由で、アットコスメストアの店頭で取り扱えない商品であっても、お客さんの試したいという期待に応えるために百貨店に行って買ってきて、テスターとして展示しています。ただ、こういった取り組みは、儲けにつながらないので、見方を変えれば売り場スペースの無駄遣いと捉えることもでき、最近ではこのような取り組みを行っていない店舗もあります。

アットコスメストアでは、現場への権限委譲が進んでおり、各店舗の活動を本社でコントロールすることはほとんどしていません。その分、現場スタッフの売上に対するコミットメントが強いため、結果として売上を伸ばすために無駄な要素を削ろうとし始めます。特に売上が伸びている状況だと、現場はもっと売り上げたくなってしまうのが現場の心情です。

しかし、売上という視点で見れば同じ無駄であっても、お客さんの期待という視点から見れば、意味のある無駄と、意味のない無駄があります。たとえ売上につながらなくてもお客さんの期待に応えるには必要な「有効な無駄」を失われてしまわないようにするためには、経営が意思を持って維持していく必要があると感じています。

株式会社ニトリ 代表取締役社長 似鳥昭雄

チャレンジャー応援 プロジェクト http://www.o-enpro.com/

株式会社スピリッツ http://www.o-enpro.com/company-profile/

http://www.o-enpro.com/client/nitori/ceo/20090309000202.html

竹内(以下T):初めて似鳥さんとお会いしたのは、2年前になります。おつきあいが始まって、中国の出張やアメリカの社員研修にも同行させていただきました。様々な経験の中で、似鳥さんと社員の方々との関係を拝見し、自由に権限を与え、仕事を任せていらっしゃるなという印象を強く受けました。

似鳥社長(以下N):そうですね。任せていると思います。

T:オーナー経営者の方は、どうしても全部自分でやりたがってしまう、やってしまう傾向にあると思います。なぜ、似鳥さんは社員の方々に権限移譲をされるようになったのでしょうか?

N:私は、自分に自信がないからです。私よりも、部下の方ができるだろうと思っているから任せます。

事業を始めた頃は、何でもかんでも自分でやっていました。会社が大きくなるにつれ、やることが増え、できないことが当然出てきますよね。できないと、もっと先、未来のことが見えなくなる。それではまずいので、部下に任せてやってもらおうと考えたわけです。自分は常に未来のことを考え、ロマンとビジョンを持ち、それを達成することが最も大切な任務なので、そのために部下にどんどん任せてやってもらうようにしています。

大事だと思っているのは、会社の進む方向が全て合っているか?ということ。

時々間違った方向に行ってしまったり、軌道を外れたりすることもありますが、その時は正します。

人は、責任を与えないと責任を取らないものです。全て私が判断すると、責任を取ることが経験できません。ですから必ず、部下から起案をさせます。そして、もし失敗したら本人が責任を取る。これが大事です。

いつも私は、「観察・分析・判断」と繰り返し言っています。問題になった場合、「原因を推測し、それが正しいか現場に行って確かめる、事実を確認する」という行動が足りないんです。

机上論でやってしまうんですね。その結果、間違った回答があがってきます。

確かに私は、部下に任せますが、「観察・分析・判断」ということができていなければ、厳しく追及しますし、何回でもやり直しさせます。書類を持ってきて、「どうしますか?」というのはダメだと思っています。観察・分析・判断をして持ってくるように言います。現場で起案すること、問題を発見することが大事です。現場に行っても、経験するだけでなく、そこから何が問題かということを発見し、なぜそうなったのか分析し、すぐ対策を打つこと。問題の発見ができない人は、なかなか成長ができないですね。

T:中国の出張に同行させていただいた時、似鳥さんとバイヤーの方、また似鳥さんと社員の方とのやりとりを聞いていて、ずいぶん細かいところまで、質問をされているなという印象を受けました。

N:先程もお話したように、常に問題を見つけること。それを部下に教えているわけです。質問をせずに、わかったつもりで仕事を進めると失敗することが多いんです。なぜ、売れているのか?売れていないのか?そういう質問をしない、問題を問いたださない場合が多い。自ら、それを部下の前でやってみて、同じようにやらせる。それが大事だと思っています。そして、これは教育の場だと思ってやっています。本人たちの気が付かないことを発見して指摘することが、上司の役目だと思うんです。本人が知っていることは言ってもしょうがないので言いませんが、知らないことはすごく細かいことでも教えます。 どうすれば、社員が育つか、どういう技術が社員に必要かということを大前提に評価基準を考えています。

T:社員を育成するという姿勢を創業からずっとやり続けていらっしゃいますが、「観察・分析・判断」ができる社員の方は増えてきていらっしゃいますか?

N:増えています。さらに問題を発見し、観察・分析・判断をし、その上で数字や状態も変革をしようということを今年のスローガンにしています。物事がなかなか進まない時は、大抵、そこが足りないことが多いです。今年は、そこを徹底的に社員に植えつけようと思っています。これは、演繹法で、30代から一生を終えるまでの社員にとって大事な技術となるはずです。20代は、問題になったあらゆることに対して、どう手を打ったかという事例を学ぶ帰納法を教え込みます。ハーバード大学などは、学生にどんどん訓練させていて、社会に出てからすぐに役立つことを学ばせますが、日本の学校では、なかなかそういう訓練はされていないですよね。実際、社会に出てから大事なことは、ロマンとビジョンを持つことだけでなく、問題を見つけて、変革していくところにあると思っています。

T:ニトリという会社は、社外の人から見ると、大企業に見えていると思います。また、オーナーのリーダーシップが強い会社とも見えていると思います。そこに飛び込んで、本当に変革やチャレンジをさせてくれる会社なのだろうかと思っている人が多いと思いますが、実際は、変革、チャレンジができる人に入社して欲しいということですよね?

N:その通りです。事業は、出来上がった壁を壊し、そしてまた新しい壁を創り、再構築していくことが必要です。同じやり方を継続するからダメになるんです。人・モノ・金・仕組み・システム、それらのやり方を変えて、新しいものを産み出していく必要があります。

ニトリは今年200店舗になり、300店舗を達成します。世界出店を推進していき、やり方をどんどん変える時にきています。ですから、先程もお話しましたように、2009年度のスローガンとして、「現状否定し、観察・分析・判断で、数字と状態を変革しよう」ということを掲げました。

それから、コントロール能力も大切だと思っています。低い目標計画を立て「120%達成しました!」と喜んだりしますが、前後の誤差は5%以内でないと。低い目標を立て、高い達成率を上げても評価しません。願望と実績が一致できるコントロール能力が高ければ評価します。

T:上司に評価してもらおうと思うと、ついつい低い目標設定をしがちですよね。お客様に評価してもらおうと思えば目標は高くなると思うのですが。

N:そうですね。社員は評価で動きますので、どうすれば社員が育つか、どういう技術が社員に必要か、ということを大前提に評価基準を考えています。

また、以前から継続して「作る・売る立場でなく、使う・買う立場で考え行動しよう」、「欠品・コストを削減し、品質向上を実現しよう」ということをスローガンに掲げています。一番大事なことは、お客様にとって商品があることです。

そのために今、我が社に足りないことは、現状否定し、変革していくことです。


会社組織の再点検: 組織チェックリスト

企業経営では個別の課題に取り組む一方、組織全体を俯瞰して再チェックすることも時には必要となる。ここでは組織全体を見渡した上で足りない点を発見していく方法について記述する。例えば、社員のモチベーション、帰属意識が低い、社内に一体感がないといった課題がある場合に、その為に何が必要かという考え方もあるが、今の組織に何が足りないかという視点で考えることもあるだろう。

直接的に組織の課題を抽出する方法として、従業員意識調査がある。これは匿名の質問票を従業員に送り、回答を集計して組織の課題を抽出する調査である。無論、社員の満足が高まれば収益が改善するわけではないので、社員満足よりも組織にどのような改善が必要かを探る為に用いる。

一方で定評のある組織論から必要項目を抜き出し、チェックするやり方もある。ここではこちらの方法を説明する。

コンサルティングの現場ではよく、組織原則と言われる。組織原則はC.I.バーナードの理論で、今なお組織論に対して大きな影響を持っている。C.I.バーナードに依れば、組織には共通目標、貢献意欲、意思疎通が必要とされている。勿論、これだけは組織は成り立たない。組織を永続させていくためにはこれ以外に人材育成が不可欠となる。

下記は、組織原則に人材育成を加えたチェックリストである。

組織課題チェックシート

組織原則 共通目標 経営理念 策定 経営理念・社是・社訓が策定されているか。「何故、仕事をするのかという社員の根本的な疑問に答えるのが、経営理念。経営者の仕事に対する哲学や何をしてお金を貰って社会に貢献するのかという内容を記述する。
浸透 経営理念(何故、仕事をするのかの答え)が社内に浸透しているか。理念を定めても社内に浸透していないようでは意味がない。経営計画発表会や新年・創業記念日の社長訓示等の際に再確認する。朝礼で唱和する会社もある。
経営目標 策定 経営目標(経営ビジョン)が策定されているか。経営目標・経営ビジョンは中期計画においてどのような状態を目指すかを示す。一般的には株主・出資者向け、社員向けに異なった指標を用いることが多い。計画を達成したらどういう状態になっているかを表す。
浸透 経営目標・経営ビジョンが組織内で浸透しているか。組織的な観点では目標とそれによって達成される状態を社員がしっかり理解している必要がある。賞与や平均給与等の報酬面でもしっかりと関係性が理解されていることが重要である。
経営計画 策定 経営計画が策定されているか。経営計画は経営者が構想を具体化したものである。社員向けの計画書では経営者のみが関与し作成するものではなく、各部署長、各事業部長を巻き込んで計画策定を行うことで、社内の一体感を醸成することができる。
浸透 経営計画が社内に浸透しているか。社員向けの計画書では各部署、各事業部の行動計画を各社員が充分に把握している必要がある。計画を業務の中で実行に移すのは社員だからである。部署長には自部署内で計画の周知徹底を依頼すると共に、社員向け計画発表会を行うなどの施策を取ることができる。
貢献意欲 賃金制度 給与水準 給与水準は業界標準以上であるか。賃金に関しては、安いと不満を産み離職を招きやすくなる一方で、高くとも満足度やモチベーションが高まるわけではないと言われている。もし、給与水準が業界標準より低いようであれば、賃上げを含めて考えていく必要がある。
考課制度 公平性 考課制度は公平、透明であるか。人事の不透明性は不公平感を生みやすい。そこで考課制度が適切に公開されているかを評価する。ここでいう考課制度とは評価基準など制度そのもののことであり、考課結果ではない。個々の従業員の考課結果を発表する必要はない。
意思疎通 会議体 設立 一般的な組織では、上から下への指揮命令、下から上への行動計画、報告の流れがある。また、機能別に商品・サービス企画開発、営業販売、納品出荷など関連する部署間での意思疎通が必要な事業もある。情報の流れが円滑になっているかを確認する。
運用 実際に会議を開き、効果的に運用されているか。よくあるのは人数が多過ぎ、上長だけが話し部下からは発言がない(最初からその目的であれば良い)、報告のみに終始し対策を決定する会議になっていないかなど。
予実対策 実績把握 実績が適時確認できる状態になっているか。予算と実績の差異に対して有効な対策を打っていく為には、成るべく早い段階で予算と実績の差異がいくらなのか知る必要がある。システム、仕組み、運用上これらの情報を現場の担当者が知ることができる状態になっているかを調査する。
対策実施 仮に予算と実績の差異が分かっているとして、それに対して有効な対策が打てているか。打てていない場合はその原因を潰していく。分かっているが特に何もしようとしていない、何か対策を打つ意志はあるが打てていない、対策を打っているが有効ではない等の原因が考えらえる。
組織永続性 人事制度 採用 採用制度が正しく機能しているか。充分に採用できているか、採用後のミスマッチが発生していないか。
人材育成 OJT、Off-JTでの研修が行われているか、また研修は有効であるか。能力開発と下記の登用が結びついているか。
登用制度 所謂、社内の「キャリアアップ制度」はあるか。組織を見渡した時に将来的に昇進していく道があるか。将来も今のままであると思われると優秀な社員の離職が増える傾向がある。