社員のモチベーション・責任感 理論まとめ

「組織成立の為の3条件」「ホーソン実験」「職務充実&職務拡大」「MBO」等、経営者が知っておいて損はない社員のモチベーション・責任感に関する理論を下記にまとめた。環境や報酬とモチベーション・責任感の関係、組織目標と個人目標の関係を改め整理すると、組織と個人について新しい視点が得られる。

議題 視点 結論
C・I・バーナード
「組織成立の為の3条件」
  • 共通目的(組織目的)

  • 協働意志(貢献意欲)

  • 意思疎通

  • 組織には目標が大事。個人の目標が組織の目標につながる。

  • 職場環境や報酬を変えたとしても人間を動かすには限界がある。組織目的が必要。

  • 人間は自分で決めたことを最も効率的に行う。

  • 自分の行動に対して結果が客観的に分かる仕組みが必要。

「ホーソン実験」
  • 労働者の作業能率は、客観的な職場環境よりも職場における個人の人間関係や目標意識に左右される。

C.アージリス
「職務充実&職務拡大」
  • 一人ひとり好きなように製品を組み立てるように言ったら、過去最高の生産高を記録

P.F.ドラッカー
「MBO」
  • 自主的に目標を立てるのが組織本来の在り方

減量ジム
  • 目標と自己の利益の明白な関係性

  • 目標が客観的にわかる

C・I・バーナードの「組織成立の為の3条件」は、組織の目標、参加者個人の貢献意欲、参加者同士をつなぐコミュニケーションが大事であることを示唆している。

「ホーソン実験」は、一見、重要と思われる外的な環境よりも、組織内部の人間関係や個人のモチベーション・責任感の持ち方が、生産性に大きく影響することを教えてくれる。

C.アージリスの「職務充実&職務拡大」では、自分の裁量で仕事をやることがモチベーション・責任感の向上につながり、生産性には一番良いことが分かった。

P.F.ドラッカーの「MBO」で言われる「自主的に目標を立てるのが組織本来の在り方」というのは尤もな話に感じる。

減量ジムに関する頭の体操では、トレーナと参加者の関係性と自社の上司と部下の関係性を比較すると、面白い気づきがあったのではないだろうか。

上記の内容を以下の通りまとめた。

  • 組織には目標が大事。個人の目標が組織の目標につながる。

  • 職場環境や報酬を変えたとしても人間を動かすには限界がある。組織目的が必要。

  • 人間は自分で決めたことを最も効率的に行う。

  • 自分の行動に対して結果が客観的に分かる仕組みが必要。



ホーソン実験: 照明は明るいのと暗いのとどちらが良いか?

突然ですが、古い工場の照明、明るいほうが良いか、暗いほうが良いか、どちらだと思いますか。

下のスライドの写真は著作権の問題で全く関係のない工場の写真になっていますが、雰囲気は似ています。ホーソン工場は電気関係の工場で、リレーや電話交換機を製造していたようです。実験が行われたのが1924年、今から凡そ100年前ですから、作業者は手作業で生産を行っていたようです。

結論から言ってしまうと、照明が明るいか、暗いかは作業者の生産性とは関係ないという結果でした。工場の照明を明るくしても生産性は向上し、暗くしても生産性は向上しました。従って、照明は生産性とは関係がないとなったのです。この実験を照明実験と呼びます。


ホーソン実験、照明実験、インフォーマルグループ、人間関係論


研究者は他にも賃金・休憩時間(食事時間)・工場内の温度・湿度等の作業環境を変更して実験を行いましたが、作業環境がどのように変わっても生産性は向上したとのことです。何やら狐につままれたような話ですが、実験結果はそうだったようです。この実験はリレー組み立て実験と言います。

今度は従業員を職種ごとにグループ分けして、バンク(電話交換機の端子)の配線作業を行わせ、その共同作業(協力行動)の成果を調べました。これがバンク配線作業実験です。その結果、それぞれの労働者は自分の持てる力をすべて出し切っているのではなく、状況や場面に応じて自ら労働量を制限(節約)していることが分かりました。労働者の「時間当たりの生産量の違い」は労働者の能力上の差異によるものではなく、状況や場面に依るところが大きいという結論になりました。

更に、「品質検査」では、上司と作業者との間に「良好な人間関係(信頼感)」があるほうが、より欠陥やミスの少ない製品を製造できることが分かりました。

この実験から分かったことは、1.作業者が注目を受けていると感じると生産性が上昇する、2.労働環境ではなく職場の人間関係が生産性に大きく影響しているということです。皆さんの職場はどうでしょうか。パートのおばさん達の力関係で生産性が左右されていないでしょうか。実際にある調査では上司・経営者の指導と職場の人間関係が退職理由の約半数を占めているという結果があります。同じ調査で給与、労働条件、労働環境等を退職理由とした割合は1/4程度でした。

実はホーソン実験が公表されるまでは、作業環境によって生産性が大きく変わると考えられていました。所謂、科学的管理法というものです。人間観も、ホーソン実験以前は自己利益のみに従がって完全に合理的な判断をし論理的に行動する「経済人モデル」、以後は人間関係や感情をより重視した「感情人モデル」に変化しました。

この実験以降、社員のモチベーション・責任感に大きな注目が集まるようになりました。G.E.メイヨー先生とF.J.レスリスバーガー先生の人間関係論です。

  • 人は注目を集めると生産性が高まる

  • 作業者の能力、労働条件、労働環境より人間関係が大事

考え見れば当たり前の結論で、我々の実感と大きくずれることもないのではないでしょうか。