【課題】社員のモチベーションが低い、管理職の部下に対する動機づけが弱い: 目標制度をうまく運用する方法

●なぜ多くの「目標」はお題目に終わるのか

もし、下記の例に思い当たることがあるなら、是非、次の文章を読んでみてください。

ある調査によると、いわゆる目標管理制度の普及率は88.5%にのぼるそうです。本誌をお読みの皆さんの会社でも既に導入済みなのではないでしょうか。これだけの普及率ではありますが、組織目標を部署目標、個人目標に落としていくという概念はご存知でも、やってみるとうまくいかないという会社もあるようです。実際に目標達成がうまく機能しない事例をよく耳にします。まずはうまくいかない例を検討してみます。

例4: 社員のモチベーションが低い、管理職の部下に対する動機づけが弱い

折角、良かれと思って目標制度を導入しても、社員の意欲がイマイチということもあります。ここではその原因について述べます。

  • 丸投げや押しつけになっている
  • 主観評価を行っている

丸投げや押しつけになっている

ある会社では上から営業目標が降ってきて、中間管理職は数合わせで部下への目標の割り振りをやっているようです。人は押し付けられた目標はやりたくないものです。これでは目標設定が逆効果を産んでしまいます。

かといって、部下が勝手に決めてきた目標を合わせても、組織目標になりません。ここが目標設定の最も難しいところです。まずは管理職が、組織目標と個人の自主目標をうまく擦り合わせること、そして部下に対して目標を達成させるのが「管理職の仕事」ということを理解する必要があるでしょう。逆にいうとこれができることが管理職の条件の一つということです。

一般社員が上げてきた目標は、経験や知識の差から、時には個別最適になってしまっていたり、実現可能性の低い施策であったりするでしょう。最初は見当外れの内容が多く、ものの見方や考え方を理解させるのに時間が掛かるでしょう。しかし、そこに丁寧に対応し指導していくことから管理職と部下の対話が始まります。全社の目標を念頭に、その為に何ができるか、何が必要か、職位に応じて考えてもらうというのが、目標設定の要点です。管理職であれば、自分の目標は担当部署の目標になりますし、一般社員であれば業務をこなすこと、能力開発を行うことが目標になるでしょう。まずは目標を達成する為に何が必要だと思うか、管理職が部下に聞いてみることが必要です。

管理職のための単年度/行動計画のつくり方

主観評価を行っている

ある会社では、目標達成の評価が社長の胸三寸で決まってしまうそうです。これでは社員のモチベーションが低くても仕方ないですよね。実際にはこんな極端な会社はないと思いますが、制度設計の際には主観評価の弊害について改めて考えてみる必要があります。

前述の通り、社員のモチベーションが低い原因には、前述の通り、組織に参加しているイメージが弱いこと、組織の目標達成と個人の利益との結びつきが弱いことが考えられます。それ以外にも、主観評価を多用しているという原因があるかもしれません。評価は目標設定とは直接には関係ありませんが、目標の評価という段階で社員の意欲を削ぐ要因があれば、目標設定もやはりうまくいかないことがあります。

主観評価というと評価基準の曖昧さが指摘されることが多いと思います。確かに評価者が自分の感覚で評価しているので評価が曖昧になります。ただ、人事評価を100%厳密にすることはできないですし、ある程度の曖昧さが残ることは仕方ありません。

寧ろ、主観評価が多いと社員の眼が内部(上司や経営陣)に向いてしまい、外部へ向かないことの方が大きな問題です。例えば前述のように社長の胸三寸で評価が決まってしまう会社では、低評価を受けた人は「社長が悪い」と思うでしょう。評価は内部で完結していますので、視線が内部に向いてしまうのは当然です。主観評価をするのであれば、その主観を持った人物、例えば経営者や管理職の言葉に相当の重みがなければなりません。

問題が会社内部、例えば経営者や管理職など、特定の人物にあると考えてしまっては、改善の萌芽は生まれません。一方で客観的評価では、自分の行動を見直し、次につなげる視点が出てきます。お客さんや外部の所為にすることが常識で考えると難しいからです。

つまり主観的な評価を排除することで、管理職と部下が一体となり外部環境に左右される目標にどう立ち向かうか、目標をどう達成するかという視点が得られるのです。

例えば、ある会社の人事部で今年の会社説明会に100名集めるという目標を立てたとします。100名集められなければ、当然、どうしたら集められるかと考えるでしょう。ごくまれに最近の大学生は頭が悪いからと他者の所為にする人がいるかもしれませんが、それは皆さんの会社では例外でしょう。ところが、結局は社長の「今年の人事部は頑張りが足りない」などという主観評価で評価が決まってしまうと、課員の意欲は大幅に減退します。当然、課員は社長が理解してくれないという考えになりがちです。

評価は目標設定とは違いますが、社員の目標設定への意欲が低く感じられるのは、評価方法に問題がないか考えてみる必要があります。

【姉妹サイト】人事制度-給与制度の考え方マトメ


例5: 管理職の意欲・能力が低い
  • 目標制度の手引き 目次

    その他、目標制度がうまく行かない理由に心当たりがあれば、下記のリンクからお読みください。

  • 【課題】目標を決めるのに時間が掛かる: 目標制度をうまく運用する方法

    新年度開始に当たっては、全社的な経営目標を部門、部署、更には個々の社員の水準に落としていく必要があります。本稿では、管理職である皆さんを対象に、今まで私が関わってきた事例を基に、目標による管理について考えてみます。勿論、読者の皆さんの会社の状況と異なることがあるかもしれませんが、適宜読み替えていただき、何かのヒントを掴んでいただければ幸いです。

    ●なぜ多くの「目標」はお題目に終わるのか

    もし、下記の例に思い当たることがあるなら、是非、次の文章を読んでみてください。

    ある調査によると、いわゆる目標管理制度の普及率は88.5%にのぼるそうです。本誌をお読みの皆さんの会社でも既に導入済みなのではないでしょうか。これだけの普及率ではありますが、組織目標を部署目標、個人目標に落としていくという概念はご存知でも、やってみるとうまくいかないという会社もあるようです。実際に目標達成がうまく機能しない事例をよく耳にします。まずはうまくいかない例を検討してみます。

    例1: 目標がなかなか決められない。

    原因: 全社目標、組織目標の浸透が浸透していない

    目標を決定するのに多大な労力と時間が掛かるという会社もあります。営業・販売であれば前年比5%UPであるとか、製造部門であれば原価低減など、比較的目標が立てやすい部署もあるでしょう。一方で総務・管理部門のように単純に数値では語れない部門もあります。

    そんな時は全社目標を考えてみると良いでしょう。まず5年先の会社の状態を表わす経営目標(経営ビジョン)を決定し、その中から達成の為に必要な行動計画を作っていくというのが一般的な方法論です。全社目標がないと前年比を元に目標設定を行うなど、目標設定自体がおざなりになってしまう可能性があります。 また、定量的な目標は前期比から算出するとして、定性的な目標は会社全体を分析し何が必要かを検討しなければなりませんので、難易度は大幅に上がります。

    全社目標が設定されていることで、それを実現する為に各部署で何をすべきかという視点が生まれてきます。例えば、売上1.5倍とするのであれば、人員は充分か、資金は充分かという課題があり、これらの課題を各部署で分担しうまく取り扱っていく必要があります。例えば人員であれば、採用、教育、配属、昇進、昇給等の課題を整理し、目標に合わせた形に変えていく必要が出てくるでしょう。単年度の計画は5年間でやるべきことの中から優先順位の高いものを行うことになります。

    もし、皆さんの会社で目標が決められないということがあれば、全社目標の浸透に見直しの余地があるのかもしれません。全社目標が社員、特に管理職に周知されていることは目標を設定する為の前提条件の一つです。

    全社目標を浸透させるには、経営計画発表会や管理職が自ら部署の計画をつくる取り組みなどがあります。下記に経営計画発表会についての記事へのリンクを掲載します。ご参考まで。

    経営計画発表会: 幹部、中核社員の自覚を促すには?

    原因: 丸投げや押しつけになっている

    丸投げや押しつけ、つまり上司と部下の意思疎通不全(コミュニケーション不足)は、社員が目標を決めるのに時間がかかってしまう原因の一つです。また、社員の意欲を大きく削いでしまいます。

    丸投げや押しつけになっている
    例2: 目標に対する熱意が持続しない

  • 目標制度の手引き 目次

    その他、目標制度がうまく行かない理由に心当たりがあれば、下記のリンクからお読みください。