管理職のための目標制度【単年度計画・行動計画】の手引き: 目標制度をうまく運用する方法


【優先順位付けと単年度の財務目標、行動目標】

中期経営計画は、大まかに5年後を見据えたやることの洗い出しでした。 ここからは今年、何をやるのかという単年度の計画を詰めていきます。 単年度の計画は「誰が」、「いつまでに」、「何を」するかという 担当者、期限、行動の3要素を詰めていきます。

・ 単年度の財務目標は現状の人員・設備で考える

財務目標は5年後を見据えた上で、今年度達成可能な目標を設定します。 行動目標の方は優先順位を決めて、今年度に実行する内容を決定します。 中期目標の方では、人材採用等、新たな経営資源の獲得も含めて検討しましたが、 ここでは既存の経営資源で出来ることを検討します。 何故なら、経営資源の獲得は通常、不確実な点が多く、 計画に盛り込むと目標が達成できない可能性が高まるからです。 新たな経営資源は、若干でもプラスになればいいと考えます。 今年度、獲得した経営資源は来年度の単年度計画を立てる際には、 計画に盛り込むことができるようになっているでしょう。

【課員への割り振り、面談】

一度、実現可能性を検討した際に、 大まかな経験・能力と人数を考えている筈ですので、 ここでは課員一人一人への割り振りを考えていきます。 勿論、課員全員の計画を合わせたものが部署の計画になります。

上手くいかない事例を思い出していただくと、 目標設定が部署内でうまく行くためには 下記の条件があることが分かります。

  • a. 課員個人の頑張りと将来のイメージを持たせる

  • b. どんな条件であれば目標が達成できるのか聞いてみる

  • c. 課員が目標達成のために何をすべきか理解している

課員との面談では、上記の点を意識すると良いでしょう。

a. 課員個人の頑張りと将来のイメージを持たせる

まず、課員個人の会社での頑張りと将来のイメージを持たせるように話します。 具体的には課員のプライベートの話から入り、 今後の方向性や数年後、数十年後にどんな状態にあれば良いか、 聞いてみましょう。 勿論、ハッキリ答えられない部下の方が多いかもしれません。 その場合は時々はこういった話題を考えてみるように促します。

自然に給料が上がっていくのはどの業界でも30代中盤が限界でしょう。 20代であれば生活費にそれほどお金が掛かるという実感がないでしょう。 それ以降、例えば子供が大学に入る頃には大きな資金が必要です。 それに備える為にはより価値の高い(顧客に評価される)仕事をすることが求められます。 会社も頑張るが社員も頑張らなければならなりません。 ベテランのビジネスマンには当然のことではありますが、 若年者にこういった会社の仕組みを理解してもらうことは効果が高いと考えられます。

b.どんな条件であれば目標が達成できるのか聞いてみる

まず、管理職である自分が、相手方の部下に対して、 出来ると思って目標を設定したことを話します。 上司である自分が設定した目標を伝えた上で、 どんな条件が整えば出来るのか、部下に問いかけてみてください。

・ 部下の視線をできない理由からできる条件に移させる

出来ない理由をいくつ積み重ねても、できる条件にはなりません。 部下ができない理由を挙げてきた場合には、 どうすればできるのか提案してほしい、○○さんなら提案できるはずだという 目標制度の主旨を強調しましょう。 部下の目線を現状から目標達成に移させます。

・ 部下の提案に対しては考え方を説明する

部下が上げてきた話は、経験や知識の差から、時には個別最適になってしまっていたり、 実現可能性の低い施策であったりするでしょう。 最初は見当外れの内容が多く、ものの見方や考え方を理解させるのに 時間が掛かるでしょう。 しかし、何故ダメなのかという理由を明確にすることから 管理職と部下の対話が始まります。

全社の目標を念頭に、その為に何ができるか、何が必要か、 職位に応じて考えてもらうというのが、目標設定の要点です。 管理職であれば、自分の目標は担当部署の目標になりますし、 一般社員であれば業務をこなすこと、能力開発を行うことが目標になるでしょう。 まずは目標を達成する為に何が必要だと思うか、 管理職が部下に聞いてみることが大事です。

c. 課員が目標達成のために何をすべきか理解している

最後に課員が目標達成のために何をすべきか理解していることを確認します。

未熟練者でなくても抽象度の高い目標設定を行うと、 中堅社員でも迷うことが多いでしょう。 例えば、社員満足度 10%改善等の目標であれば、 どういった行動計画を立てるのか、中々難しいところだと思います。

職位制度から見てみると、部署の結果目標に対して、 何をすれば実現できるのか理解し、それを実効に移せば一人前と考えられます。 一般の会社でいえば、主任や係長級ということになります。

マネジメント理論の行動目標、行動計画、KPIという概念はご存知かと思います。 要は結果を出すために何をすれば良いか、 結果は管理できないが行動は管理できるという考え方です。 勿論、簡単に何かをすれば結果が出るという業務は少ないものです。 しかし、逆に考えるとこれが明らかになれば、売上が読めるようになり、 事業として大きく成長する可能性があります。 例えば、コンビニエンスストアは各社独自の集計で、 商圏と地域性から開店の前に店舗の凡その売上が分かるそうです。 売上が読めるからこそ、使ってよいお金も分かります。 仕組み化することができ、事業は成長します。

●事例

鈴木課長は35歳で食品製造業の会社で営業課長を担当しています。 管理職でなかった時は積極的な営業で実績を上げてきましたが、 管理職になってからは自分の営業スタイルが 今の部下に合わないかもという不安を感じています。

丁度その頃、情報通信網を介した直接販売が業界内で大きな話題になっており、 鈴木課長の部署で担当することになりました。 鈴木課長は自社の業界内での地位を勘案し、 5年で既存の売上の10倍を目指すことにしました。

鈴木課長の部署には、若手で情報技術に詳しいと評判の佐藤君がいます。 直近の人事評価でも5段階中、上から2番目の評価を取っています。 鈴木課長は目標設定の為の個人面談の席で、 佐藤君にどうしたら5年で売上10倍にできるかを聞いてみました。 自分の専門外のことだったので、素直に聞いてみることにしたのです。 佐藤君の出してきた条件は、

・ 自分の売上目標は前期並み ・ 販売管理システムの管理者権限 ・ 毎月10万円の広告予算

の3つでした。これ以外にもたくさんありましたが、 無理なものは無理ということを鈴木課長は懇切丁寧に説明し、 佐藤君がアイディアを固めていくのを手伝うような立場を心掛けました。

上記の3つ、個人の売上目標は自分の裁量で何とかなる範囲でしたが、 残りの二つは上長や他部署との調整が必要でした。 まず販売管理システムの管理者権限はシステム課との調整を行い、 佐藤君が臨席する会合を設定してあげました。 会合の専門的な詳細は把握できませんでしたが、 何とか折衷案を探せたようです。

毎月10万円の広告予算は、取り敢えず今期は5万円で佐藤君には納得してもらいました。 月に5万円という額は現状の通信販売の粗利とほぼ同額でしたが、 このまま、まともな売上を作れないようではやる意味がなく、 粗利分を広告費に使うだけなので赤字にはならないと言って社内を説得しました。

結果として、売上10倍は1年前倒しの4年で達成できました。 鈴木課長は部下がやりたいことを支援する形に持っていくと、 部下が自分の言うことを聞くようになるというヒントを掴んだようです。

  • 目標制度の手引き 目次

    その他、目標制度がうまく行かない理由に心当たりがあれば、下記のリンクからお読みください。

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